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寸志とは、一般的に「心ばかりのお礼」として贈る金銭や品物を、贈る側が謙遜の気持ちを含めて言い表す言葉です。「寸」は日本で古くから使われている長さの単位で1寸は約3㎝、「志」は気持ちのことですから、まさに「ちょっとした気持ち」という意味そのものを表しています。冠婚葬祭の場面でお手伝いをしてくれた人など、お世話になった人に対しての感謝として贈るものに対して使われることが多いほか、会社が社員に支給する規定の賞与(いわゆるボーナス)とは別に臨時的に特別手当を渡す場合にも、こちらの言葉が使われます。ここで注意しなければならないのは、寸志というのはあくまで渡す側が用いる謙譲表現であり、もらう側が「寸志をもらった」と言うのは失礼にあたってしまうという点です。寸志をいただいたことを他の人に伝える時には「ご厚志(ご芳志)をいただいた・賜った」と言います。
歓送迎会などの宴会で寸志を渡されるのには大きく分けて2つのパターンがあります。まずは、上司や先輩など会社で上の立場にあたる人から、みんなの宴会費用の足しにと渡されるパターン。次に、その宴会の主賓として招待されている人が、一定の金額を包むパターンです。特に2つめの、参加費を免除される立場の人が寸志を渡すのは既にビジネスマナーとして定着している面もありますので、もし自分がその立場におかれた場合には心に留めておきましょう。ただし、自分が新入社員として歓迎会などに招待された場合は、一般的に参加費を包む必要はありません。どうしても心配な場合は、同僚や先輩などに内々に慣例を聞いておくと良いでしょう。
寸志は、立場や年齢、地位などが上の人から下の人へ渡すのが一般的です。下の立場から寸志にあたるものを渡したい際には、「謝儀」や「御礼」などの言葉を用いて贈りましょう。いずれにせよ、宴会の場での寸志は参加者代表として幹事へ渡されることがほとんどですので、自分が幹事として寸志を受け取った場合、それをどのように扱い、どのように振る舞うかについては、社会人としてしっかり覚えておきたいところです。
寸志にふさわしい金額は立場や場合によりさまざまですが、あくまでも、もらった側が気を遣わない金額というのがひとつの基準になります。1.000円~10,000円の間に収めるのが常識と言われています。たとえば宴会費用の足しにという名目で渡す場合は、1人あたりの参加費よりも多めに包むのがマナーとされていますが、多くても10,000円以上を包む必要はありません。できれば紙幣1枚で包むのがスマートだとする考え方もありますが、参加費の金額や会の性質などによって臨機応変に考えて良いでしょう。
宴会に対して寸志を包む場合、冠婚葬祭ほど厳しいマナーは求められませんが、可能であれば赤棒模様の入ったのし袋を用意するのがベストです。それが難しければ、無地の白封筒や、あらかじめ寸志の文字が入った白封筒を用意します。筆ペンを用いてのし袋もしくは封筒の表面上部に「寸志」と書き、その下に自分の名前を書きます。用意した寸志は、できるだけ宴会の始まる前までに幹事に渡しましょう。その際、幹事への労いやお礼の言葉を必ず添えることが大切です。自分が宴会に出席できない場合は、幹事に参加者へのメッセージを託すことで、より自分が寸志に込めた気持ちが伝わることと思います。
繰り返しになりますが、上司や先輩などから「寸志」を受け取った際は、間違っても「寸志をいただき…」などと言ってはいけません。また先方が用意してきた以上、その気持ちを断ることもかえって失礼にあたります。「寸志」として手渡されたものは素直にありがたく受け取り、先方には「お志いただき感謝いたします」というように伝えましょう。宴会に対していただいた寸志は、宴席が始まったら乾杯の前などできるだけ早いタイミングで必ず参加者に報告します。寸志を出した本人がその場にいる場合は、「本日、○○様よりお志(ご厚志)をいただいておりますのでこの場を借りてご報告いたします。○○様、ありがとうございました」などと紹介し、参加者からの拍手を促しましょう。幹事として寸志を預かった場合、その使い道について悩むこともあるかと思います。職場であれば先輩や同僚などと相談し、職場の慣例があればそれに倣い、特にそういったものがなければ何かの形でその日の参加者に還元できる方法を考えましょう。それと同時に、いただいた方へのお礼も忘れずに行うことまでが幹事の務めです。金額や雰囲気などにもよりますが、少なくとも後日必ず礼状をお送りし、できれば菓子折りなどちょっとしたものを付けるなどして、謝意を伝えることが望ましいです。
社会に出るまではなかなか縁のない「寸志」という言葉ですが、円滑なコミュニケーションを図るためには非常に大切な習慣のひとつです。寸志のもらい方、渡し方などをしっかり知っておくことで、いざという時に備える助けとしてください。
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